みんな、ときどきひとり
その日、毎年、6月中旬に行われる文化祭を2週間後に控え、放課後に出し物の準備をすることになった。
2組では、出店を出すことと、クラス対抗の出し物ではダンスを踊ることになっていた。
ダンスといっても、昔流行ったヤンキーものの歌に合わせて、みんなで男装して踊るくらいで、振り付けもそんなにこだわっていないからすぐ覚えられそうなものだ。
「髪、リーゼントにしたいなぁ」美和子がセミロングの髪を撫でながら言った。
「ね。やるんだったら、気合いれたいよね。ボンタンとかはいてみたいな!」梨花も意外に楽しそうだ。
「優菜、似合いそうだよね男装」と口を揃えて言われてしまったから「わたしもそう思う」と言うしかなかった。
実際、自分でもそう思う。
教室の後ろに机を下げて、空いたスペースで、軽く振りの練習をしたあと、休憩することになった。
「喉渇かない?」の誰かの一言で、ジュース買出しジャンケンが始まる。
勝つ気満々だったのに、「なんで、グー出したかなぁ」と心の中で呟いていた。
わたしだけ1発目で負けた。あり得ない。断トツ、運なしだ。
運のないほかのクラスメイトの女の子2人と階段を上り購買部前の自販機に向かっていた。
2年2組の教室がまた見えて、横目で教室を見るとクラスのほとんどが残っているのだろうか、大人数の人がしゃがみ込んで作業しているのが見えた。
ペンキの臭いがするからきっと文化祭の準備をしているのだろう。
水城くんが、共同作業とか似合わなそうだよな、と思いながら通り過ぎようとすると、2組の前の廊下に大きい板にペンキを塗る人たちが見えた。