みんな、ときどきひとり
その中にも水城くんもいて、ジャージ姿でしゃがんでいた。
わたしと一緒にいる女の子は「すごいね。何作るんだろう」とはしゃぎながら言ってきたけど、「そうだね」とわたしはぶっきらぼうに言った。
また視線を送ってみたけど、やっぱり気づかれなかった。
って、美和子があんなこと言うから変に意識してしまってるみたいだ。
自販機でジュースを買っていると、最後の1本でチャリーンと小銭が手から滑り落ちて廊下に転がった。
「優菜ちゃん、大丈夫?」と2人の女の子は駆け寄ってきたけど両手はジュースを抱えている状態で拾いようがない。
「あと、1本だし、大丈夫だよ。先行ってて」と、言いながらもあと100円がどうしても見つからなかった。
これは、自腹ですかと廊下とにらめっこしていると、「ここにありますよ」と言うお気楽な声がした。
100円を右手に持ったわたしでも見上げてしまう長身の男の子がいた。
目鼻立ちがクッキリしていて日本人の顔というよりも、どこか異国の血が混ざっていそうだ。ハーフっぽい。
「あっ、すみません。ありがとうございます」
その男の子は、ニコニコした顔で「なに買うの?」と言った。前髪が邪魔なのかピンクのゴムでチョンマゲを作っている。
「えっと。お茶」と言うと「オッケー」と、お茶のボタンを押してくれた。
「ありがとうございます」
「持つよ」と言って、わたしが持っていたジュースを数個取った。
「あっ。いいですよ」
「いいよ。いいよ。だって、重いじゃん」と言って、スタスタと歩きだした。
「何組?」
「1階の2組」
「了解しました」と言うと、わたしの歩幅に合わせるようにゆっくり歩きだした。