みんな、ときどきひとり

その中にも水城くんもいて、ジャージ姿でしゃがんでいた。

わたしと一緒にいる女の子は「すごいね。何作るんだろう」とはしゃぎながら言ってきたけど、「そうだね」とわたしはぶっきらぼうに言った。

また視線を送ってみたけど、やっぱり気づかれなかった。

って、美和子があんなこと言うから変に意識してしまってるみたいだ。

自販機でジュースを買っていると、最後の1本でチャリーンと小銭が手から滑り落ちて廊下に転がった。

「優菜ちゃん、大丈夫?」と2人の女の子は駆け寄ってきたけど両手はジュースを抱えている状態で拾いようがない。

「あと、1本だし、大丈夫だよ。先行ってて」と、言いながらもあと100円がどうしても見つからなかった。

これは、自腹ですかと廊下とにらめっこしていると、「ここにありますよ」と言うお気楽な声がした。

100円を右手に持ったわたしでも見上げてしまう長身の男の子がいた。

目鼻立ちがクッキリしていて日本人の顔というよりも、どこか異国の血が混ざっていそうだ。ハーフっぽい。

「あっ、すみません。ありがとうございます」

その男の子は、ニコニコした顔で「なに買うの?」と言った。前髪が邪魔なのかピンクのゴムでチョンマゲを作っている。

「えっと。お茶」と言うと「オッケー」と、お茶のボタンを押してくれた。

「ありがとうございます」

「持つよ」と言って、わたしが持っていたジュースを数個取った。

「あっ。いいですよ」

「いいよ。いいよ。だって、重いじゃん」と言って、スタスタと歩きだした。

「何組?」

「1階の2組」

「了解しました」と言うと、わたしの歩幅に合わせるようにゆっくり歩きだした。
< 201 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop