みんな、ときどきひとり

「どうもぉ」と言う声で、振り返る。前髪をチョンマゲにした男の子がいた。

美和子が言ってた軽いという噂の手嶋くん。

今日は、苺のついたヘアーゴムで前髪を結わえている。

「あっ。どうも」と、会釈して受け取ったばかりの味噌ラーメンを持って前を通り過ぎようとした。

「あっ。ちょっと待って待って!」と手嶋くんは慌てた声をだしてわたしを止めた。

「一緒、ごはん食べません?」

はい?

友達と食べるからと何回か断ったものの、結局一緒にご飯を食べることになった。

女の子3人に男の子1人でテーブルを囲んでいるのも周りから見たらどんな光景に見えるんだろうか。

ごめん。梨花、美和子。心の中で謝った。

「みんな、彼氏いるんすか?」と期待通りの軽い男の子なのか、さらりと恋愛の話をふってくる。

「わたしと優菜はいないよぉ」と梨花が私じゃ2個あってもお腹いっぱいにならなそうな小さいお弁当を広げながら言った。

「そうなんだ。よかった」と、彼は笑った。

あ。こういうことか。梨花と知り合いたいが為に、わたしに話しかけてきたのか。

妙に納得。やっぱり、梨花はモテるよなぁ、としみじみ思いながらラーメンをすする。

「優菜先輩、番号教えてくれませんか?遊びましょうよ」

「んっ」

驚きのあまり、喉に熱いラーメンがひっかかりそうになった。

わたしを殺す気?じゃなくて、何?この前、言っていたお礼は本気だったったってこと?

グラスに入った水を一口飲みこみながら手嶋くんの顔を見た。

その満ち溢れた笑顔を見ると、悪いことを企んではいない気がするけど。

ただ意味がわからなかった。


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