みんな、ときどきひとり

「優菜に思いを寄せる男現る」教室に戻ると、美和子がポツリと呟いた。

「えっ?違くない?普通、あそこで彼氏いないとか言ったら梨花に番号聞くよね」

明らかにわたしは動揺している。

梨花は自分の席に座りながら「なーに、言ってるのぉ。そういうこと言わないの。優菜のこと好きになる人なんていっぱいいるんだからぁ」とわざと怒った顔をしてみせた。

番号を教えることを断る理由なんて見つからなかったし、教えてしまったけれど。本当に連絡がきたら、どうしよう。

「優菜の初彼になったりして。あいつ、振られたことないらしいしね。他高の女子とかにもモテるみたいだし」と、美和子がどこから入手したのか、そんなことを言った。

「えー。すごいね、それ。振っちゃえ、優菜。振られたことのない男なんてつまらないよ」

また2人して、言いたいこと言って突っ走ってるけど。

もちろん、ただ番号訊かれただけなんだから何も起こりはしないよね。

ましてや、そんなモテる男が、わたしみたいな普通以下の女の子に興味を持つわけがないんだから。

どこかで、馬鹿にされている。そんな思いがまだ勝っていた。
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