みんな、ときどきひとり

「そんなことより、大が、まだ帰ってこないの。もう22時よ」

「ああ。そうだね。携帯は?」

「繋がらないのよ。何かあったんじゃないかと思って」

母の顔には明らかに焦りの色が見える。

「友達んちでもいるんじゃないの?」

「思い当たるところ電話かけてみたんだけどいないって言うのよ」

「わたし、見てこようか、周り」

母はその一言を言わせたかったに違いなく「本当に?じゃぁ、探してきてちょうだい」と用意していた科白を言うようにためらいなく頼んだ。

濡れた髪を軽く乾かして、パーカーを羽織って外へと出た。

普通、こんな時間に女子高生を外出させるかよ、と思ったけれどわたしが選んだことだから仕方なかった。

母はこうやって、わたしに頼みごとをするのがうまいんだ。

わたしもわたしで、母に頼まれたことを頑張ってしまうんだけれど。

しかし、大の行くところってどこだろう。

小さい頃だったら、よく公園とか川とかで一緒に遊んでたりしたけど、さすがにこの年にもなったら遊ぶ場所も変わっているだろうし見当もつかない。

とりあえず、近くの公園や中学校やスーパーの周辺、人が集まりやすいところを廻った。

だけど、わたしの勘は昔のように当たることもなく、大の姿はどこにも見つけられなかった。

どこにいるんだろう。

時計を見ると、23時を指していた。
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