みんな、ときどきひとり

小雨がぱらついてきて、乾かした髪を濡らしていく。

母からも電話もないから、きっとまだ帰ってきてないんだろう。

このまま帰ってこなかったら、警察に届を出したほうがいいのかな。

そう思いながらも、駅の周辺も探すことにした。

街頭があるものの、あまり明るいとは言えない静かな住宅街の夜道をわたしは探して歩く。駅まで辿り着いて周りを見てみたけれどやっぱり弟の姿はなかった。

その代わり、駅前のコンビニのレジに並ぶ彼の姿を見つけた。

コンビニの自動ドアが開いて、袋を下げた水城くんが出てくる。

わたしを見つけて、驚いたように目を大きく見開いた。

「何やってるんですか?」

「ええっと。弟を探しに……」

「弟?こんな時間に?ひとりで?」

「うん。中2の弟なんだけど、お母さんが帰ってこないって落ち着かなくて、探しに来たんだけど。見つからなくて」

「一緒、探しますよ。どこら辺探しました?」

ううんと左右に首を振った。

「1時間くらい探したんだけど見つからなかったから、1回家に帰ろうかと思ってたとこ。水城くんはどうしたの?」

「ああ。姉ちゃんが、腰痛めたみたいで今日、明日とこっちの家に泊まるんですよ。助けろとかしつこくて」

「本当に?ぎっくり腰とか?旦那さんは?」

「ぎっくり腰って言うと、すげー否定しますけどね。旦那は出張でいないんすよ」

方角は一緒だったから、話しながら来た道を引き返した。

住宅街はしんと静まりかえって、わたしたちの声しか聞こえない。

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