みんな、ときどきひとり

「あっ。本当に?良かった。どこにいたの?」

「友達の家で寝てたみたい。あんた、今どこにいるの?」

「えっと、駅前のコンビニまで来たんだけど、今家に戻ってるとこ」

「そう。男の子と一緒なんでしょ?」

「えっ?なんで知ってるの?」

「大があんたと男が駅前でいるの見たって言ってたから。
まったく、大のこと全然心配してくれてなかったのね。
がっかりしたわ」

受話器の向こうから、呆れたような溜め息が聞こえる。

「何それ?」

顔が引きつる。笑えないと思った。

「探しにいくとか行って男の子と会ってたんでしょ。汚らわしい。帰ってこなくていいわよ」

ガチャッと唐突に電話が切れた。ツーツーツーという音だけが耳に鳴り響いている。

わたしは、通話が切れたままの携帯を見つめた。

そのまま呆然としてしまったのだろう。

「どうしたんですか?」と水城くんが足を止めて、わたしを見ていた。

「………られた」

「はい?」

「捨てられた」

後は、何も言えなかった。

物心がついてから、ずっといい子でいたわたし。

母に捨てられたくなくて、みんなの顔色ばっかり見て笑っていたわたし。

母が父と弟を見るように見られたくて、頑張っていたわたし。

そうすれば、小さい頃からわたしの中にある恐怖感が、なくなると思ってた。

愛には、形がないから、もしかしたら愛されてるのかもしれないと心のどこかで思っていたのに。

愛されていなかった。

そんなこと、気づきたくなかった。
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