みんな、ときどきひとり
あれ、顔が近い。
もう少しで顔が触れあってしまいそうだ。
わたしの手元を見つめると、ソファだと思って抱きついたのは、水城くんの身体だったことに気がつく。
どうやら、彼の胸に顔をうずめてしまったらしい。
抱き着いたわたしの背中には、彼の右腕があって、わたしは抱きしめられていた。
「ごめんって。なんだ。水城くんも雷恐かったんでしょ?」と冗談を言って彼の身体から手を離した。
だけど距離はまだ変わらない。
水城くんの手がゆっくりとわたしの頬に近づいてくる。
わたしはピクッと肩を揺らしたあと、身体が硬直してしまい、その手を見つめることしかできなかった。
その瞳は。口元は何か言いたげに見えて。
何かに吸い込まれたみたいにわたしの意識はそこに集中する。
2人きりの部屋には、遠くに感じるテレビの声と、私の心臓の音しか聞こえない。
心臓が雷を聞いたときよりも激しく波打つ。
心臓の音って、こんなに大きかったっけ。
何で、こんなにドキドキしてるんだろう。