みんな、ときどきひとり
「んぎゃぁ!」という怪獣のような叫び声が聞こえた。
それが、ほのかちゃんの声だと気づくと、現実の世界に引き戻された気分になった。
水城くんは、何事もなかったかのように、襖を開けて和室のお姉さんに話しかける。
「ほの、起きた?」
「起きた、起きた。雷にびっくりしたんですかぁ?」と座りながら、ほのかちゃんを抱っこして優しい声で話しかける。
2人の会話が聞こえてきたけれど、わたしは、それどころじゃなくて、顔が熱くて自分が今、真っ赤になっているのがわかった。
2人のやりとりに軽く相槌を打ったあと、冷静を装ってトイレに逃げた。
キスされるのかと思った。
そう思うと、んなわけないじゃん、って自分が頭の中に出てくる。
キスしたかったんじゃないの。
わたしの心の下部分くらいからわたしを見上げて言う自分が見えた。
あの手が、欲しくなったんでしょ。
雷の中抱きしめてくれた手が、欲しくなったんでしょ。
なおも自分はわたしにそう言う。
水城くんは、抱きついたわたしを彼の手で抱きしめてくれてた。
それは、本当は、彼自身を守りたくてわたしを抱きしめたのかもしれないけど。
でも。
それでも。
誰かに抱きしめてもらうのって温かかったから。
うん。
あの瞬間、ただ、あの手が。
欲しくなった。
自分の腕でわたしの肩をギュッと押さえたまましゃがみこんだ。