みんな、ときどきひとり

それからほのかちゃんはぐずり続けていたけど、そんな時間がさっきのドキドキをかき消してくれたからわたしには丁度良かった。

一通り落ち着いた頃には、時計は深夜2時を過ぎていた。

お風呂あがりの水城くんは、シャンプーなのかな。フローラルのいい香りがする。黒のスウェット姿も初めて見るし。何か変な感じ。

じっと見ていると、目が合ってしまった。

さっきの出来事を思い出して、思わず目を逸らしてテレビに向けた。

意識しすぎ。どうした、わたし。

だって、思えば抱きしめられたのは初めてじゃないのに……。

そんなわたしに気にする様子もなく「寝ますか」と言って、寝室を案内してくれた。

いつもは、ここでお姉さんと旦那さんが眠っているのだろうか。

大きなダブルベッドが置いてあった。

「えっ。ここで寝ていいの?わたし、布団とか、そこら辺でいいんだけど」

「客用の布団、今姉ちゃん使っててないんですよね」

そう言えば、ほのかちゃんのベビーベッドがあるから、和室に寝てるって言っていたことを思い出した。

「水城くんは?」

「俺は、ソファで寝ますよ」

「ええっ。悪いよ。いや、わたしがソファで寝るよ。突然、来ちゃったんだし」

「そんなことしたら、俺が姉ちゃんに殺されますよ」眉間にしわを寄せて、少し困った顔をした。

「だって、こんな広いベッドで1人で寝れないよ。リビングから離れてるし。それに、お化け……」

水城くんがお風呂に入っている間、リビングにいるときでさえ1人が恐かったのに……。

こんな広いところで1人なんて無理だ。さっき見たテレビの映像が頭をよぎる。

「子供ですか」と水城くんは呆れた目でわたしを見た。
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