みんな、ときどきひとり
ねえ。わたしでも、いいのかな。
ダメじゃないのかな。
水城くんは、なんでこんなことを言ってくれるのかな。
「でも。わたし、卑屈だよ?」
「誰でも、そうじゃないですか?」
「いつも、みんなが羨ましいよ?」
「憧れがあって良かったですね」
「こんなこと考えるのって、おかしいかな?」
「おかしいことなんか腐るほどありますよ」
「こんなんじゃダメだと思っちゃうよ?」
「少し卑屈な位が丁度いいんじゃないですか。
それで生きられるなら、ダメだろうが卑屈だろうが、なんでもいいと思いますよ」
振り返らない彼は今、どんな顔をしているんだろうと、わたしは想像した。
目をつむっているのだろうか。
眠ろうとしているのだろうか。
何を見つめているのだろうか。
泣いたりしていないだろうか。
「顔、跡残らなくてよかったですね」
そう言われてわたしは頬を触った。
さっき水城くんが触れたようとした頬を。
「うん。ありがとう」
雨の音が聞こえる。
雨の音が、ずっと聞こえていて、耳から離れない。