みんな、ときどきひとり
お姉さんの代わりに、水城くんと近所のスーパーまで買い物に行くことになった。歩いて3分くらいの所にある、小学校の近くのスーパーだ。
「あっ。今日、予備校だ」
すっかり、忘れていた。今から行っても間に合わない。
「行かなくていいんですか?」
「う、うん。今日はいいや。なんせ家出中ですから」
スーパーの青果コーナーから、玉ねぎを一袋とった。水城くんは少し苦笑しているように見える。
「あっ。笑ったね」恨めしそうな顔で、水城くんを睨みつける。
「笑ってないですよ」
「笑ったよ。いいよ。不良でもないし。すぐどうせ帰るだろうし」
思い切りのない自分にしゅんとしてくる。
だけど「それでも、これはわたしの中の反抗だよ」と付け足すように呟いた。
「子供ですから。みんな、誰かの子供ですから。振り回されるのは仕方ないんですかね」
水城くんと話す度、ふと疑問にいつも思うことがある。
水城くんのこの大人びたと言うか、落ち着いた空気って何だろう。
少し何かを諦めたような冷たさを感じてしまうのは何故だろう。
やっぱりお母さんが先に死んじゃった分、大人になろうとしたのかな。
甘えちゃいけないと思ったのかな。
甘えたいときも、一人で抱え込んでいたのかな。
お母さんが死んじゃったときはどんな気持ちだったのかな。
小2なんて小さい身体で受け入れることは出来たのかな。
哀しかったたんだろうな。
泣いたんだろうな。
きっと。
わたしは、泣くのかな。
もし、弟が死んでしまったなら。
父が居なくなってしまったなら。
母が消えてしまったなら。
泣けるのかな。
考えてみても、想像つかなかった。
愛してほしいと思っていたわたしは、愛しているのだろうか。
それさえ、わからなかった。