みんな、ときどきひとり

バイトと言って、水城くんは出て行った。

お姉さんとほのかちゃんと3人でソファに座りテレビを観ている。

ほのかちゃんはお姉さんのミルクを飲んだあと、大人しく抱っこされていた。

「ほの、抱っこする?」

お姉さんの腕からほのかちゃんが渡された。そっと、抱っこした。ほのかちゃんを見ると目が潤んでいた。

「泣きそうなんですけど……」

「大丈夫、大丈夫」なんて軽く言うけど。案の定、ほのかちゃんはワァーと大きな声をあげて泣きはじめた。

「ああ、ほのかちゃん泣かないで。ほらほら」

高い高いをしたり、変な顔をしたりするけど、泣き止む様子もない。一度お姉さんに預けてようやく落ち着いた。

「赤ちゃん抱っこしたの弟が生まれた以来なんですけど」

「弟さんいくつ?」

「中2です。だからだいぶ前の話なんですけどね」

「そっか。まわりに小さい子いないとそんな機会ないもんね」

「お姉さんは弟……修くんが生まれたときどうでした?」

「どうって?」

「可愛いとか。嬉しいとか」

「そりゃ、嬉しかったよ。可愛かったしね。まあ、歳も少し離れてるからだけど」

「そっか。そうですよね」

お姉さんの答えに少しがっかりした自分がいた。

なにを聞こうとしていたんだろう。可愛くなかったよとかそんな言葉が聞きたかったのかな。

自分という人間が少し汚く感じた。
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