みんな、ときどきひとり
なにもない
土曜日になった。
朝起きて、わたしの部屋のカーテンを開けるとやわらかな日差しが差し込んだ。
パジャマのまま、1階へ下りると母が困り顔でキッチンに立っていた。
「おはよう」
「あっ、おはよう。いいとこにきた」
何か頼みたいことがある、そう直感した。
「棚の上に置いてあるカゴ取りたいんだけど届かないのよ」
「脚立持ってきたらいいじゃん」
「2階に置きっぱなしなのよね。あんたはいいじゃない、無駄にでかいんだから」
無駄にでかいってあんたが産んだんだろう。
まあ、150センチちょっとしかない母から見たら、無駄なんだろうけど。
「しょうがないな」と言って少し背伸びをしてカゴを両手で取り上げた。
「これ、どうするの?」
カゴを渡しながら訊いた。
「今、掃除しててね。いらないもの、捨てようと思って」
せかせかと忙しそうな母を尻目に「ふぅん」と言って、キッチンを出た。
リビングのソファに座ってテレビをつけた。
携帯の受信ボックスを開いて昨日きた、梨花からのメールを確認する。
『今日は東口に19時だよ。おしゃれしてくるように』