みんな、ときどきひとり
「すみません。言いたくない」
冷たい言葉が胸に突き刺さった。
例えれば氷の刃みたいなものかもしれない。
太くて大きい氷の刃は、わたしの心なんて一突きでバラバラにしてしまえる。
「わかった」と、かろうじて声になった。
顔を見ないで水城くんの横を通り過ぎて部屋を出た。
玄関で靴を履いていると、「送りますよ」と水城くんが言った。
「大丈夫。まだ、明るいし」
「でも。ここの辺、変態でますよ」
「本当に大丈夫だよ」
「また猫見て、大騒ぎするかもしれないのに」と少し笑いながら言った彼の冗談が小馬鹿にしたように聞こえて苛々した。
「本当はどうでもいいくせに」
「えっ?」
「水城くんは誰も好きじゃないんだから、わたしのことなんかどうでもいいんでしょ?無理しなくていいよ」
「なに言ってるんですか?」
「好きじゃないのに、心配したふりとかしないでよ!優しくしないでよ!……誰も……誰も好きじゃないくせに!」
つい怒鳴ってしまった。
彼の顔から、表情が一瞬で消えた。