みんな、ときどきひとり
潰れたジュース
学食で、いつものように3人でお昼を食べていると「優菜ちゃーん」と、とびぬけた明るい声がした。
「なんで、返事くれないわけ?俺、家で正坐して待ってたのに」
手嶋くんは、わたしの隣の席に座った。心なしか、みんなに見られているような気がした。
「あっ。ごめん、充電なかった」
「まじで?ありえないっすよ?2、3日も?どっか行ってたんすか?山?」
水城くんのお姉さんちなんて言えるわけがない。
「川」
「もう。合言葉じゃないんだから」
はははと大きい声で笑った。こんな返し、全然面白くないじゃん。
彼の態度を見ていると、馬鹿にされてると思わずにいられなかった。
昨日の出来事がわたしの心をより不安定にさせているせいかもしれない。彼の言動ひとつに苛立ちを覚えてしまうなんて。
だからつい「手嶋くんってなんなの?からかってるの?」ときつい口調で言ってしまった。
だけど彼も彼で「からかってないっすよ」と動じることもなかった。
「だって、急に遊ぼうって言われても意味わからないよ」
「好きだからですよ」と、さっきまでおちゃらけた顔が急に真面目な顔に一変した。
「この前、話したばっかじゃん」
「それでも好きになることだってありますよ。
いつどこで、誰を好きになるかなんてわからない。
それに、好きかどうかは俺の心が決める」と言いきったあと、ヘラリと笑った。