みんな、ときどきひとり

「じゃあ。わたしは手嶋くんのこと好きじゃないよ」と、言ったにも関わらずまたにっと笑って言った。

「いいですよ。好きにさせますから。じゃあ。今度こそ遊びましょうね」と手を振りながら去って行った。

手嶋くんが居なくなると、3人して何も言えなくなって黙ってしまった。

呆気にとられた。そんな言葉が似合うのだと思う。

そして、周りがこっちを見てひそひそ話をしていることに気がついて恥ずかしくなった。

「なに?今の熱いやりとり」美和子が口火を切った。

「知らないよ。わたしが訊きたい」

「でも思ったより、本気みたいじゃない。モテる男の自信は深いね」

梨花はあまり彼が好きじゃないのか、少し皮肉っぽい。

だけど、わたしは「んー」と言いながら、別のことを考えていた。

わたしにもあんな自信があれば、水城くんが誰も好きにならないって言った言葉を気にしないで、好きと言えるのだろうか。

わたしのことを好きにさせる。

考えてみても、そんな自信なんて湧くわけもなかった。



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