みんな、ときどきひとり

学食を出て「あっ。ジュース買ってこよう」と言うと、美和子と梨花に調子よくジュースの買い出しを頼まれてしまった。

「ジャンケン」と言いだしっぺなわたしが、結局、今日も負けてみんなの分も買いに行くはめになった。

まあ、いいさ。

最初から買いに行くつもりだったしね、と言い聞かせながら水城くんの教室へと繋がる階段を上る。

視界は2組の教室を捉えるけど、そこに、彼の姿は見つけられなかった。

少し残念なようなホッとしたような気持ちになった。

あんなことがあったばっかりで、正直顔なんか合わせづらいに決まっている。

自販機にお金を入れて、次々にボタンを押す。

取り出し口に手を置いて、気がついた。

まとめて買ってしまったから、取り出し口の内側のカバーが引っ掛かって、ジュースが取り出せなくなってしまった。

馬鹿だなぁと思いながら、パックジュースを引っ張る。

我ながら、情けない光景だと思う。

「引っかかってるんですか」と低くて優しい声がした。
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