みんな、ときどきひとり
階段を一歩
嫌われた。
そう思うと、なにも出来ずにいた。
あれから気まずいままで話もしていない。
それでも、文化祭の準備とか予備校とか、手嶋くんの夜かかってくる電話とか。
色々やることはあって、それなりに忙しいと言えば、忙しかったんだ。
この1週間は。
水城くんと話しても、話さなくても、わたしの時間には、なんの影響も及ぼさなかった。
それは、きっと。
水城くんにも言えることだろう。
ただ、わたしが考えてしまうだけで。
それが、余計に哀しかった。
そして、文化祭当日。
「優菜、格好いい!」
美和子と梨花がわたしの男装というか、不良な姿を見て黄色い声をあげた。
「そう?ありがとう」
内心、複雑な気持ちだけども。
周りを見ても、みんな気合い十分だ。コスプレ好きな子のグループはお手製のものを着用している。
わたしたちは美和子のお兄ちゃんが昔着ていた制服をリメイクした。
髪の毛も、結んで逆毛を立てて、リーゼント風にしてみた。
クラスの出し物の順番はあらかじめ、くじ引きで決められていて、午前中の第1部となっていた。
「文化祭も今年最後だね」
体育館の裏で、出る順番を待ちながら梨花が寂しそうに言った。
「だね。早かったよ、3年間」
美和子もなにかを思い出して懐かしんでいるみたいだった。来年はこうやってみんなと一緒にいられないのだと思うと、一瞬一瞬とはなんて儚い時間なんだろうと思った。
もしかしてこの文化祭だっていつか記憶の底に眠ってしまうことなのかもしれない。
だけど、それでも。
今のわたしがこの瞬間、みんなといることは本物なんだなと思うと胸がジンとした。