みんな、ときどきひとり

「今日、12時までここいるんすね」

黒板のタイムシートを見て言う。

「あっ。うん」

しまった。ばれたと思っても、もう遅かった。得意気に微笑まれたからだ。

「じゃあ。あとで迎えにきます。一緒、廻りましょうね」と言うだけ言って去って行った。

「勢い良すぎて、反論できなかった」とわたしが言うと、「手嶋くん頑張るね」と美和子が玉ねぎを切りながら言う。

「本当良く落ちないね、優菜。わたしだったら付き合ってしまいそう。あんなに愛されてるなんて」と、梨花が不思議そうに呟いた。

愛されてる?

そうか。これは愛なのか。

よくわからないけど、やっぱり、見えないし。

もしかしたら愛じゃないかもしれないし。

それも確かめようがない。

でも、どっちだっていいや。

「落ちないよ。だって、わたし、水城くんのこと好きだし」

熱くなった鉄板の上に油をひいた。少しはねた。

同時に「はっ?」と、2人の驚く声が教室中に響き渡った。
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