みんな、ときどきひとり
振り返ると、「お姉喫茶」と書かれたプラカードを持っている、ナース服を着た金髪の女の子が立っていた。
「亮太?」
「一瞬、わかんなかっただろう。俺って」
グロスがついたテカテカの唇を大きく開けて笑った。
「ぷっ……亮太、意外にいけるんじゃん」
「違うわよ、亮太じゃなくて今日はスザンヌよ」と、声色を女の子にしてスザンヌと書かれた名札をわたしに見せつけてくる。
「ははははは。スザンヌ?外人?しかもなにその口調?」
「女の子ですもの」
「やっぱきもいかも。じゃあ、あとでご指名にいくわよ」
亮太の口調を真似して言った。
「頼むわよ」と笑う。
気がつけば、わたしは階段を一段上っていた。
「あっ、スザンヌちゃん」
振り返って、亮太を呼び止めた。
「なによ」とまたさっきの女の子の声で返す。
「彼女とお幸せに」と笑顔でピースをした。
「任せなさいよ」と言いながら、少し照れたような表情で亮太もピースをした。