みんな、ときどきひとり




「優菜!」

改札を出ると、東口の交番の横に梨花が手を振って立っていた。

ゆるく巻かれたロングの髪。レースのベアトップワンピにGジャンを羽織っている。ウェッジソールのサンダルを履いてもわたしの背には届かない。

「おしゃれしてきてっていったのに、なんでジーパンかなぁ」

ロンTにスキニ―ジーンズなんてやる気のないわたしの格好に少し不満気の顔をする。

「悩んでたら、何着ていいかわかんなくなっちゃった。はは」

「もう。優菜の為にセッティングしたんだからね!」と頬を膨らませる。

そのとき、わたしの耳に「あの子、可愛くねぇ?」と男の声が聞こえた。

同時に視線も感じて、気づかれないように探してしまう。自販機の隣にいる2人組の男性がこっちをチラチラ品定めするみたいに見ていた。

梨花のことを言っているんだろう。彼女と一緒にいるとこういうことが日常茶飯事で起きる。

だけど、そんな声に気づく様子もない梨花は「遅いねぇ」と待ち遠しそうにしている。
< 25 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop