みんな、ときどきひとり
「優菜!」
改札を出ると、東口の交番の横に梨花が手を振って立っていた。
ゆるく巻かれたロングの髪。レースのベアトップワンピにGジャンを羽織っている。ウェッジソールのサンダルを履いてもわたしの背には届かない。
「おしゃれしてきてっていったのに、なんでジーパンかなぁ」
ロンTにスキニ―ジーンズなんてやる気のないわたしの格好に少し不満気の顔をする。
「悩んでたら、何着ていいかわかんなくなっちゃった。はは」
「もう。優菜の為にセッティングしたんだからね!」と頬を膨らませる。
そのとき、わたしの耳に「あの子、可愛くねぇ?」と男の声が聞こえた。
同時に視線も感じて、気づかれないように探してしまう。自販機の隣にいる2人組の男性がこっちをチラチラ品定めするみたいに見ていた。
梨花のことを言っているんだろう。彼女と一緒にいるとこういうことが日常茶飯事で起きる。
だけど、そんな声に気づく様子もない梨花は「遅いねぇ」と待ち遠しそうにしている。