みんな、ときどきひとり





保健室を出て、教室に戻ろうと廊下を歩く。

目、腫れてないかな。梨花と美和子に会ったらまた泣いてしまいそうになる。きっと。

昇降口に目をやると、扉が開いている下駄箱が目にとまった。

位置的に、わたしの場所にも見えて、気になって向かうと、やっぱりわたしの下駄箱だった。

だけど朝と違うのは、紙クズや飲みかけのペットボトル、お菓子の箱、明らかにゴミとしか思えない物が置かれていたからだ。

「何これ」

思わず靴を取り出すと、ゴミが足元に落ちた。

奥にあったクシャクシャの紙クズを取って広げてみた。

そこには、〝ブス〟〝死ね〟〝ケントを返して〟と書かれていた。

これは、手嶋くんを好きな女の子の仕業かな。

もしかして、複数犯かもしれない。

ゴミの量の多さにふとそう思う。

人の気も知らないで。振られたばかりの人間に、こんな仕打ちしないでよ。

本人に言ってくれよ。わたしみたいなブスやめろって。

紙クズをまたクシャクシャに丸めた。

やだな、また泣いてしまいそうだ。

ふと、視線に気づいて廊下を見た。
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