みんな、ときどきひとり
会いたくない人

文化祭が終わると、あっという間に期末テストがやってきて、受験生だし行きたい大学もあるから、それなりに勉強した。

6月の父の日には、ネクタイを贈った。

安いネクタイなのに、父からのお小遣いで買ったものなのに、電話越しの父は嬉しそうな声で「毎日つけるよ」と言った。

そんなにつけたらボロボロになります、お父さん。

最後に父は「冬くらいに異動でそっちの家に戻れるかもしれない」と言って、電話を切った。




そして、明日から夏休み。

教室では、「あちぃ」と美和子がうなだれた声を出していた。

「今日、すごい海とかプールに行きたいよね」と梨花が下敷きであおいでいる。

「お前ら、終業式だぞ、体育館行け!体育館!」

担任の誘導する声で、しぶしぶと移動する。

体育館に入ると、教室よりもむしむしして暑い。

前側には、1、2年生が背の順で並んでいる。その後ろに3年生が並ぶ。

背の高い手嶋くんは、後ろに並んでいて、体育館の中央入口から入ったわたしに気がついて手を振ってきた。

つられてわたしも振り返してしまった。
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