みんな、ときどきひとり
ミンミンとセミは鳴いている。
じりじりとアスファルトを焦がしていくような暑さ。
太陽は意地悪だと思う。こんなに汗ダクで家に帰る女子高生がいるのに、顔色ひとつ変えないで、照らし続けているなんて。
というより、太陽を隠さない雲が悪いのか。
どうでもいいことを考えて、八つ当たりする。
家の近くの公園の横を通る。奥には、水城くんのお姉さんの住むマンションが見える。
ここを通るたびに、偶然会えないかなと心のどこかで思ったりするけれど、会いたいと思うときほど偶然はなかったりするんだ。
また、空に八つ当たり。
しかめっ面をして睨んでみた。
だけど、眩しくて目が開けれない。自虐的。
「優菜ちゃーん!」と、呼ばれる声がして周りを見る。
だけど、道路を歩いているのはわたししかいない。
気のせいか。
「ここだよー!」とよく見ると、公園のほぼ中央にあるだろう、噴水の近くに赤ちゃんを抱いている女の人を見つけた。
「あっ。お姉さん」
水城くんのお姉さんとほのかちゃんだった。
わたしは柵をまたいで飛び越えると、お姉さんの元へ駆け寄って行った。
「お久しぶりです。腰、大丈夫ですか?てか、ほのちゃん、大きくなりましたね」
お姉さんが抱っこしているほのかちゃんに顔を寄せた。ほのかちゃんの手をとってブンブンと腕を振る。