みんな、ときどきひとり

「でしょ。もう成長早いよね、子供って。あっ、腰はお陰様で大丈夫だよ。そんなこともあったね。あははは」と嬉しそうな声をだした。

それから「痩せた?」と、まじまじわたしの顔を見つめた。

「えっ?」

「なんか優菜ちゃん細くなった気がする」

「変わらないですよ」

「そーう?でも、最近お家に来てくれないから元気なのかなぁとか思ってたんだ。嬉しいな」

「あ。すみません、テストとか文化祭とかあったし」

適当に言いわけを並べた。この様子だと、水城くんに告白して振られたことは知らないみたいだ。

「そっか。受験生だもんね」

あっ、と何か思いだしたような声をあげた。

「ねえねえ、ここの川でさ花火大会あるんだよね?さっき、近所の人が言ってたの」

「花火大会?ああ、ありますよ」

毎年、8月の第4日曜日になるとこの川では花火大会が行われる。

確か、3千発位打ちあがるだけで、関東の他の何万発も打ちあがる花火大会に比べれれば影なんて、薄いものなんだけど。

それでも、5歳でここに引っ越してから小学生のときからずっと、花火大会を楽しみにしていた。

ピンクの浴衣を着て出かける。

その後ろを弟を抱く母と父がいて。

家の周りがその日だけは出店があったり賑わっていてお祭りムード一色に染まって行く雰囲気が賑やかで嬉しかったんだ。
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