みんな、ときどきひとり




夏休みに入って、手嶋くんからは何度か電話があった。

なんとなく、シカトしたり、電話にでたり、用事があるとか言ったり遠まわしに避けてみたけれど。

彼は意外にしぶとくて、週末に一度だけ、遊ぶ約束をしてしまった。

「やっと、遊んでくれた」と、Tシャツにジーパンを腰穿きした私服姿の手嶋くんが笑顔で言った。

「大袈裟じゃない?」

素っ気なく言う。相変わらず、Tシャツに黒のサルペットを着てラフなわたし。

「大袈裟じゃない。俺、こんなにデートの誘い断られたの初めて」ときっぱりと言い切られた。

そう言われると、わたしが悪いみたいだ。

だけど手嶋くんは「じゃあ、行こうか」と、満面の笑みで手を差し伸べた。

「はっ?」と、目を丸くすると「手、繋ごう」と言った。

「無理」

「なして?冷たい……こんだけ待ったのに」

「暑いし、手汗ひどいし……ていうか、それに付き合ってないし」

断り文句三拍子が綺麗に出揃う位、手を繋ぐ理由が無かった。

「優菜ちゃんって固いっすね、ガード」

寂しそうな顔をして、ボーリング場の中に入り、受付を済ます。

「固いよ。付き合ったことないもん」

もう、何にでもなれと開き直る。
< 261 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop