みんな、ときどきひとり
夏休みに入って、手嶋くんからは何度か電話があった。
なんとなく、シカトしたり、電話にでたり、用事があるとか言ったり遠まわしに避けてみたけれど。
彼は意外にしぶとくて、週末に一度だけ、遊ぶ約束をしてしまった。
「やっと、遊んでくれた」と、Tシャツにジーパンを腰穿きした私服姿の手嶋くんが笑顔で言った。
「大袈裟じゃない?」
素っ気なく言う。相変わらず、Tシャツに黒のサルペットを着てラフなわたし。
「大袈裟じゃない。俺、こんなにデートの誘い断られたの初めて」ときっぱりと言い切られた。
そう言われると、わたしが悪いみたいだ。
だけど手嶋くんは「じゃあ、行こうか」と、満面の笑みで手を差し伸べた。
「はっ?」と、目を丸くすると「手、繋ごう」と言った。
「無理」
「なして?冷たい……こんだけ待ったのに」
「暑いし、手汗ひどいし……ていうか、それに付き合ってないし」
断り文句三拍子が綺麗に出揃う位、手を繋ぐ理由が無かった。
「優菜ちゃんって固いっすね、ガード」
寂しそうな顔をして、ボーリング場の中に入り、受付を済ます。
「固いよ。付き合ったことないもん」
もう、何にでもなれと開き直る。