みんな、ときどきひとり
だけど「あっ。そうなんだ。」と言って、ボールを選ぶ彼の様子は何も変わらなかった。
付き合ったことのないことなんか、この人にとってはどうでもいいことなのか。
そのままボールを綺麗なフォームで投げいれる手嶋くん。10本のピンを全部倒した。
「よっしゃー!」とガッツポーズをして振り返る子供みたいな笑顔の彼を見ると、心に引っかかるわたしのコンプレックスが少し小さくなった気がした。
いつも、卑屈は隣り合わせにいるけど。
何ゲームか終わらせたあと、通り沿いのファーストフード店に入る。
「お待たせです」とソフトクリームとコーラを両手に持ってわたしのいるテーブルへと戻ってきた。
「ありがとう」と言って受け取ると、周りの視線を少し感じた。
「やべ、溶けてきた」
彼は慌ててソフトクリームを舐める。
「手嶋くんてすごいよね」
「はい?」と大きな二重まぶたをパチクリさせて、不思議そうな顔をした。
「なんか今日一緒いて思ったけど、目立つね。みんなが見てるなぁと思って」
今だって、こっちを見て通り過ぎて行く女の子が目に入る。
「そうすか?そんなことないと思うけどなぁ」と茶色い長めの髪を片手でくしゃっと潰した。
慣れてて気がつかないのかな。すれ違うたびに女の子が見ていること。
「ハーフ?」
「おっ。俺に初めて興味持ってくれましたね。ハーフですよ。スペインと日本ミックス」
「ふうん。こんな質問、いつもされるでしょ、ごめんね」
「なんで、謝るんですか?俺、嬉しいけど」