みんな、ときどきひとり

ああ、なんでなんだろう……。

なんで、彼なんだろう。

今、いちばん会いたいはずなのに、いちばん会いたくなかった彼が立っていた。

なんで、ここにいるの。

一人でプリクラ、なわけない。

「水城くん」って、言葉に出せなかった。

だって、目、合わない。

こんな真正面にいるのに、目、合わない。

黙って目を伏せて、こっちを見ないようにしているのがわかった。

そんなわたしの様子に気づいたのか、2人が後ろを振り返った。

「あ。修くん」

真理恵ちゃんの顔がほころぶのがわかった。

やっぱり……。

真理恵ちゃんは今日、水城くんとデートしていたんだ。

じゃなきゃ、ここにいないもんね。

こんなところに一人で来るわけがないもんね。
ここに居たくないよ。

そっと後ろに下がって、みんなから距離を置く。

だって、嫌だな、わたし。サンダル履いて、水城くんより大きいもん。

手嶋くんと一緒にいるところなんか見られたくなかったし。

あ、違う。真理恵ちゃんと一緒にいるの見たくないのか。

ううん……どれもかな。

真理恵ちゃんと、水城くんはなんか話してるけど、周りのゲームの音で何を話してるか聞こえてこない。

手嶋くんも2人に何か話しかけている。

だけど、それもわかんない。

真理恵ちゃんの手が、そっと、水城くんの腕に触れた。

無理だ……。

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