みんな、ときどきひとり

「手嶋くん、そろそろ行かない?お腹空いちゃった」

なるべく不自然にならないように近寄って言った。

「あっ。そうっすね。じゃあまたな」と彼が言って、2人と別れたけど。

心臓、痛いよ。






ご飯を食べ終えて、家路に着く。家の近くの十字路まで手嶋くんが送ってくれた。

「じゃあ」と別れの言葉を切りだそうとしたとき「優菜ちゃん」と、いつものおちゃらけた顔が真剣な顔つきに変わった。

「俺、ずっと前から好き好き言ってたけど。本気だから」

わたしは何も言えずに唇をかんだ。

「いつも素っ気ないけど。今日、笑ってくれてすげえ嬉しかったし。うん。好きです」

いつも自信満々な手嶋くんの目が緊張しているのか少し泳いでるように見えた。

わたしはいつも、人のことを誤解していたみたいだ。

モテるからとか、軽いからとか、誰でもいいんだろうとか思ってたけど。

そんなこともないのかもしれない。

自信満々に見えても実際はどういう気持ちなのかもわからない。

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