みんな、ときどきひとり
〝決め付け〟が好きなわたしを少し恥ずかしく思った。
もしも、本当にわたしのことが好きなら、本当のことを言おう。
「わたしね、好きな人がいて、この前振られたばかりでさ。まだ、好……」と言いかけた瞬間、「ああ、いい」と手島くんが言葉を被せた。
「俺、今日は伝えたかっただけだから。返事いらないです」
「へっ?」
「俺、好きにさせるって言ったじゃん?だから、焦ってないし、とりあえず今は、またこうやって会いたいです」
「で、でも…」
好きにならないかもしれないと続けて言おうとする前に、手嶋くんは「じゃ」と言って帰ってしまった。
ずるい。
ずるい、のかな。
わたしも、ずるいのかな。そんなこと言われたら、寂しくなったら、彼に甘えてしまいそうな気がしないこともないんだ。
だって、優しいし。
わたしをなぜか好きと言ってくれるし。
なのに。
おかしいな。
わたしは、誰かに好きだと言われたくて仕方なかったのに、愛されたくて仕方なかったのに、どうしてだろう。
飛び込むことが、出来なかった。
だって、嬉しいはずなのに、また水城くんのことを考えてしまう。
わたしは本当は何がほしかったんだろう。
誰かに思われたかっただけじゃなかったのかな。
ただ、苦しいから。
昼間のソフトクリームみたいに、好きなんて気持ち、暑さで溶けて流れてしまえばいいのに。
溶けないまま、わたしの心に住み着いている、この思いにまた泣きそうになるんだ。