みんな、ときどきひとり

最近の母の悩みは〝大が女の子と付き合っているかもしれない〟ということらしい。

2人きりでいるときにそういう話ばかりしてくる。

大が男になっていく姿を見たくないんだろう。

思春期だから仕方ないじゃんって心の中で思ったけれど、またキレられるのも嫌だったから、何も言わなかった。

わたしだって、好きで傷つきたいわけじゃない。

スニーカーを履き、小学校の近くのスーパーへ行く。

水城くんと一度だけ買い物に行ったスーパーだ。

かごを手にとり、店内を見渡した。走り回る小学生くらいの男の子たちが足元を通り過ぎていく。

元気だな。楽しそう。いいな。

ふと、虚しさに襲われた。

会いたい。

偶然でもいいから、会いたい。

駅からの道を、トムボーイの前を何度も歩いているのに、どうして、頭ひとつも見えないんだろう。

右手に持った携帯を見る。

発信履歴の頭には、水城くんの名前があって。

話したわけじゃないけど、何度もかけようとして発信キーを押して、すぐ自分で切った。

馬鹿みたいなことを大真面目でやれてしまう。

病気みたいだ。

真理恵ちゃんと付き合ってるかもしれないのにな。

わたし、懲りないな。

着信音が鳴り響くと、携帯の画面にお姉さんの文字が並んだ。
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