みんな、ときどきひとり
「はい」

電話に出ると、「もっしもーし」と明るいお姉さんの声がした。

「とうもろこし食べる?」

「えっ?とうもろこし?」

「うん。とうもろこし。
なんか旦那くんの実家から大量に送られて来ちゃって。
今、大量に茹でたら食べ切れなくてさ。そしたら、優菜ちゃんの顔が浮かんだわけ。
おいでおいで」

「えーと」

なんで、とうもろこしでわたしの顔が浮かぶんだ?とうもろこし顔?なんと言っていいかわからず口ごもる。

「あっ。今、お家にいなかった?」

「あ、近くにはいますけど」

「じゃあ、気が向いたらおいでね」と言うと電話が切れた。

気が向いたらおいでって、これで行かなかったら失礼じゃないか?

どうしよう。

行ってもいいのかな。

「いらっしゃい」

お姉さん家のドアが開くと、そう言って迎え入れてくれた。結局、悩んだあげく来てしまった。

「お邪魔します」

恐る恐る足音を立てないように部屋にあがる。

その様子を見て「今日も、旦那くんいないから、そんな固くなんないで大丈夫だよ」と笑う。

「あ、そうなんですか」

いや、旦那くんじゃなくて、水城くんを意識してるからです。

なんて、言わないけど。

とりあえず、家に来ていないことを知ると、気が抜けた。
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