みんな、ときどきひとり
白いワンピース
その日も予備校が終わり、いつものように駅へと向かう。
駅前の交差点で、タイミング悪く信号が赤になり立ち止まった。
今日も暑いなと、額を軽く拭った。
朝の天気予報でも、猛暑ですと言ってただけはあるな。
ふと右斜め前を見ると、どこかで見覚えがある横顔があった。
水月ちゃん。
彼女の白いワンピースが太陽の日差しで輝いて見えた。
その身体が、ゆっくりと前へ倒れ込んだ。
「危なっ……」
思わず、彼女の肩を引き寄せ、歩道側へ引っ張った。
彼女の身体が、わたしにぶつかって止まる。
「大丈夫?」と言うと、そのまま無言で彼女はその場にしゃがみこんで、片手で顔を覆った。
信号が青になり、周りにいる信号待ちの人はいっせいに歩きだす。
一瞥したり、関係なさそうな顔をして、通り過ぎていく。
ここじゃ、邪魔になる。
「歩ける?」と少し屈んで彼女に声をかけた。
ようやく、わたしの存在に気付いたように、ゆっくり顔をあげた。
顔色悪いな。具合が悪くて倒れたのか。
ほっと安心した。路上に自分から飛び込んだようにも見えたからだ。
「なんでここにいるんですか?」と、か細い声で呟いた。