みんな、ときどきひとり
だからですかね。

わたし、気づいたら、怒鳴っていたんです。修くんに向かって。

ちゃんと好きだよ。勘違いなんて、人の気持ち決めつけないで。そんなこと言うの、最低って。

そしたら、彼、なんて言ったと思います?

ちゃんと自信持って、怒れるんでしょ。って言ったんです。

そうやって、間違えたこと言われたらちゃんと怒れるんでしょって。

どういう意味かわからなくて、ぽかんとしてしまったんですけど。

そういうこと言えずにため込んでるのかと思ったって、彼は言いました。

だから、あんなことしたのかと思ったと。

そうなる前に。誰かを憎む前に、自分のこと考えられたら良かったのに。簡単なことじゃないだろうけど。って。

だから、わざと、怒らせたの?って訊きました。

そしたら、わざとじゃない。あんなこと平気で言える。俺、三田村が思ってるような奴じゃないよって、言いました。

あ。振られてしまうんだ、ってそのときにようやく気が付いたんです。

だけど、振られてしまったら、全てが終わってしまうと思ったんです。

彼のことを好きでいられなくなるなんて、わたし、考えられなくて。

どうしても、彼が欲しくて。

そう思ったら、涙がとまらなくて、彼の身体にしがみつくように抱きついてしてしまったんです。

今、思うと、自分でもすごいことしたと思うんですけど。

本当に、離れたくなくて。

でも、彼は、顔色ひとつ変えません。
でも、一度だけ、背中を。こう、子供を寝かしつけるみたいにトンッと叩いてくれて。

それだけが、嬉しかった。

すぐ、離されてしまいましたけど。
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