みんな、ときどきひとり
なんで、わたしが。
そう思ったけれど、コロコロ地面を頼りなく転がっていくボールを追いかけた。
屈もうとしたときだった。
横から手が伸びて、先にボールが拾われたのは。
「あ」
男の子だった。顔をあげたわたしには目をやらず、遠くにいる彼らに向かって、大きく腕を振って投げた。
「あ、ありがとうございます」
いちおうの御礼を言ってみるけど、顔がよく見えない。前髪が長くて、目の下まで隠れている。
その割には、綺麗な黒髪。風が吹いたらサラサラと音を立てそう。
彼は何も言わず、渡り廊下へと歩いて行った。
華奢な背中だった。
それにしても、返事さえしてくれないなんて。聞こえなかったのかな。そうは思えない距離に、首を傾げたくなった。