みんな、ときどきひとり

ふと思い出した。

そういえば、と言った。

「水城くんが、誰も好きにならないって言うのはなんでなんだろう」

水月ちゃんは、目を丸くした。

だけど、「わわわたしは、なんとなく心当たりがあります」と言った。

「えっ?」

「わたし、あなたより、彼のことわかってますから」と口角を上げて、勝ち誇ったように笑う。

変わらないな。わたしに対する対抗心。

きっと、仲良くはなれないだろうな。





お店を出て、さっきの信号で立ち止まる。また、信号は赤だった。


「本当は、修くんが、わたしのことを覚えていてくれただけで充分、嬉しかった」

水月ちゃんは、呟いた。

「えっ?」

「あなたみたいに、友達がいる子には理解出来ないと思いますけど。それだけで、すごく嬉しかったんです。わ……わたしの存在に気づいてくれて」

「うん」

本当は、わかるよって言いたくなった。

だけど、やめた。

代わりに、声には出さずに、わかるよって、心の中で言った。

わかるよ。

わかったつもりにはなるよ。

わたしだって、そう思うときがあるから。
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