みんな、ときどきひとり

待ち合わせ場所のマンションの入り口に行くと、お姉さんは、チュニックシャツにデニムのサブリナパンツという格好でほのかちゃんを抱っこして手を振っていた。

「あれ。浴衣じゃないんですか?」

「着たかったんだけどね。ほのか抱っこしたら着くずれするかなぁと思って。ごめん、ごめん」

なんだ、じゃあ、着て来なければよかった。一人で張り切ってるみたいじゃないか。

一言、言ってくれたらよかったのにな。

「始まるし、行こうか」

悪いと思う素振りもなく、楽しそうな声で川原を指さした。

ほのかちゃんもそれに合わせて楽しそうにダァと言う。

うん、親子だな。

今さら着替えるわけにもいかないし、しぶしぶ「はーい」と言うしかなった。

お姉さんのあとをついて行く。階段を上って、川が見えるところまで出ると、河川敷に多くの人が場所を取って、埋め尽くされていた。ビニールシートを敷いてる人もいて用意周到だ。

「みんな、準備いいですね。座るところあるんですかねぇ」

「あっ、ここ」と言うとお姉さんは、人ゴミを少しかき分けて、奥にある水色のシートに座った。

「場所取りしてたんですか?」

「うん。シートだけ敷いておいたんだ。ああ。早く始まらないかな。久しぶりだよ、花火大会」

意外。気の向くままに生きてそうなのに。

お姉さんの隣に座ると、お姉さんは、携帯を開いて、電話をした。

空は薄暗くなり、夜を連れてくる。風はあまり吹いていないから、綺麗な花火が見れそうな気がした。

花火、見たかったな。

水城くんと一緒に見たかったな。

ダメだ。わたし、ほんとに懲りてない。当分、このままなのかもしれない。

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