みんな、ときどきひとり

脳や心臓にこびりついてるみたい。水城くんって名前が。顔が。

黒髪の少し、長めの髪。

細めのきりりとした目。

筋の通った高めの鼻。

あまり笑わないけど、笑うとくしゃっとなる目尻。

『また意味のわからないことを』って、呆れた声。

わたしが何かすると、眉間にしわを寄せた困り顔。

そうそう。そんな感じの顔。

今まさにその表情で、水城くんがわたしを見て突っ立っていた。

「修、ここ」とお姉さんは手を振って彼を呼ぶ。

携帯を耳から話し、水城くんは目を合わせないで頭を小さく下げた。

わたしは、どうして居るの?という顔をお姉さんに向ける。

「あっ。さっき、出かけ間際に修が忘れ物取りにきて、待つの嫌だから、とりあえず置いてきたの」

水城くんは「はい、鍵」と、お姉さんに手渡す。

「修も、見てけば、花火?暇なんでしょ?」

「ああ、花火」

「そのほう楽しいよね、優菜ちゃん?」

「は、はい」と慌てて頷いた。

「いや、用事あるし、帰る」

「つまらない男」と、お姉さんは不服そうに言った。

だけど「はいはい。じゃ、帰るから」と軽くあしらう。

わたしがいるから嫌なのかな。それとも、真理恵ちゃんと遊んだりするのかな。

ゲーセンであった出来事が頭を過ぎる。腕に触れる、真理恵ちゃんを。
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