みんな、ときどきひとり
「あっ。じゃあ、帰るついでに何か屋台で買ってきてよ」とお姉さんが命令口調で言う。
「また、戻ってくることになるから嫌だけど」
「可愛い姪っ子と友達とお姉さまを飢え死にさせる気?ほら、これでみんなのジュースとか買ってきなさいよ。お姉さまのおごりよ。だから買ってきて」と、財布からお札を抜き出して手渡す。
「ほのか、食べないし。お金だって、旦那でしょ」と水城くんが言うと、パシッとお姉さんの平手打ちが彼の足に当たった。
はあと溜め息を吐くと、「何食べる?」と訊いた。
「わたし、焼きそばとお茶でいいや。あと何かおいしそうなの。優菜ちゃんは?」
「あっと、えっと」
ただでさえ優柔不断なのに、こんな状況で何も決められない。突然の展開に頭と心がついていかず、真っ白のままだった。
「じゃあ、一緒行ってきたら?」とお姉さんが言った。
一緒に行っていいのかな?と彼の顔を伺うように横目で見たけど、目が合わなくて、どう思っているのかを読み取ることが出来なかった。
「とりあえず、何か買ってくる」と彼が歩き始めると「優菜ちゃんも行ってきなよ」と後押しされ、慌てて彼の後ろを追いかけた。
小走りで行くとすぐ彼の背中に追いついた。
だけど、隣を歩く勇気は湧いてこなかった。
そんなわたしが後ろにいることに気づいていないかのように、話しかけてもこない。
当然なのかな。わたし、彼を傷つけてたかもしれないし。