みんな、ときどきひとり

それに水城くんも気づいたんだろう。また前を向いて歩きだす。

謝りたかったのに、怒ってしまった。

なんて、自己中なんだ、わたし。

でも口をきいてもらいたくていっぱいいっぱいだった。

後ろをまたとぼとぼと歩く。河川敷と住宅街をつなぐ階段を降りると、屋台が立ち並んでる道路にでた。

焼鳥、フランクフルト、焼きとうもろこし、焼きそば、りんご飴と、おいしそうな文字がいっぱい見えるけど、今はそれどころじゃない。

「水城くん、ごめんね」

聞こえてるのかな。わたしを見ない。

「水城くんに好きって伝える前に、言うことがあったよね。
誰も好きじゃないくせになんて言って一人で怒って、ごめんね。
そんなこと、思ってないから」

そう言い終わって俯いた。

聞こえてる?

「でかいですね、頭」

水城くんが言った。

「は?あ、頭ってお団子?おかしい?花つけたのに」

適当にセットした髪を恨めしく思った。浴衣を着てるのに、頭のことしか言われないわけですか。

「いや、可愛いですよ、花」

ちらっとわたしの頭を見て言う。

そうかい。やっぱり、わたしは花以下かい。

そりゃ、可愛いかったら振られません。振られません。

ちょっとすねた顔をして、口をとがらせた。

ああ。もう。こんなそっけない人のことなんか、忘れてやるんだから。
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