みんな、ときどきひとり
「ねえ……小さいときに、2人で留守番してさ。わたしが大を家の外に追い出したことあったよね。憶えてる?」
「あ?突然なんだよ?……あった気もするけど。それが?」
「わたしは、家の中にいても、いつもああいう気持ちだったよ」
「ああいう気持ち?」
「家の中にいても、外にいるみたいだった。
……ねえ。だから、わたしはいなくなったって変わらないけど、あんたがいなくなったら、困るんだよ?
わたしがいても、どうしようもないじゃない。
だから、無理しないでよ」
もう、いい。
大は悪くない。
知ってた。
「なんで、そんなこと思ってんだよ?姉ちゃんのが、俺より出来いいからいいじゃねえかよ。意味わかんねえよ」
「でも、あんたは愛されてる」
言い切って、息を吐いた。
「あのとき、ごめんね。あんたのこと嫌いでやったわけじゃないから」
そう言って、弟に背を向けると、「わけわかんねぇ」と小さく呟く声が聞こえた。
もういい。
もういい。
もういいんだ。
病室のドアを後ろ手で閉めた。
また、息を吸い込むと、呼吸していることを感じられる。
弟との距離がとれなくなった。小さい頃は、弟を可愛がってれば良かったのに。
あのときから、ずっと、わからなくなっていたからなんだ。