みんな、ときどきひとり
何度、期待しただろう。
この人に、娘としての存在を認めて貰えることを。
何度、望んだだろう。
この人に、娘として愛して貰えることを。
だけど、この人を見てると愛なんか。
この人を見てると愛なんか。
なんて汚れたものなのかと思う。
人間の手垢にまみれた薄汚い言葉なのかと思う。
愛なんか言えば綺麗に聞こえるだけで、それ自体はその人自身を映したようなものだよ。
その人自身みたいなんだよ。
それでも、わたしはずっと欲しがっていた。
手垢まみれの薄汚れた言葉が、わたしに注がれることを待っていた。
こんな人なのに。
「お母さん。変なのは、お母さんのほうだよ」
そうだよ。病気みたいだよ。気持ち悪いよ。おかしいよ。
「なに?」
「なんでも言うことを聞く子供はいい子なの?
あんたの言うことを聞かなくなったわたしはダメな子なの?
わたしは、昔から、アンタに捨てられたくなくて、我慢して生きてたんだよ!」
わたしの肩に置かれた母の手に力が入らなくなったのか、ズルリと腕が落ちた。