みんな、ときどきひとり
「花火と言ったら河原かな」と結局、花火大会が行われていた河川敷までゆっくり歩いて行った。
「出戻りだね」と笑いながら。
夏の夜風はまだ暑くて身体をつきまとう。
河川敷まで辿り着いて、2人でしゃがみ込む。
「よし!やろっか!」と、封を開けた。
手持ち花火に火をつけると暗闇にザァーと火の光が流れだす。さっきまで、よく見えなかった水城くんの顔を照らしだす。
「きれーい」
思わず声をあげた。去年の夏以来かな、花火。
水城くんの顔を見る。良かった。いつもと変わらない表情だ。
「花火、久しぶりだなぁ。今年した?」
「タローたちと一回」
少し胸が痛んだ。また真理恵ちゃんの顔が浮かんだから。
「いいな。わたしなんて、夏期講習だったよ」
「そのわりに焼けてますけど」
「わかった?海行ったら、焼けたんだよね。背中皮剥けてまだ痛いし。海とか行った?」
だけど、結局、詮索してしまう言葉を選んでしまう。
「行ってないですよ。バイトばっか」
「本当に?真理恵ちゃんとデートとかしてたくせに」
ダメだ、言ってしまった。
「デート?」と、眉根を寄せた。
「あ。ゲーセンで。いや、なんでもない。やっぱ、忘れて」
言ったわたしがなぜか気まずい気持ちになる。
「ああ」と、思いだした顔を見ることが出来なかった。