みんな、ときどきひとり

ポトッと、火の消えた手持ち花火を落としてしまった。慌てて拾う。

訊かなきゃ良かった。今日だけはって、思ってたのに。

馬鹿だな、わたし。自分からつまんなくさせてる。

「そっか。真理恵ちゃんとうまくやってるんだ」

そう言うのがやっとだった。笑えてるかな。暗くて、良かった。

「ぷっ」と、水城くんが噴き出した。

「へ?」と言うと、彼の手持ち花火がわたしの顔を照らす。

「誤解してません?」

「誤解?だって、デートって言ってたよ、真理恵ちゃん」

「ああ」と言うと、「俺じゃなくて、タローとですよ」と言った。

「え?タローくんと?もしかして、2人付き合ってるの?」

遊園地での息ピッタリな2人の姿が浮かんだけど、仲がいい友達だと思っていた。

あの日は、水城くんと真理恵ちゃんが、ずっと一緒にいたから。

「付き合ってないですよ。タロー、彼女いるし。2人きりで遊べないから。だから、あの日最初は3人で集まって、俺だけ先に帰って、2人で遊んでもらったんです」

デートと嬉しそうに言った真理恵ちゃんの顔を思い出す。

ということは、好きなんだ。

でも。それって……完璧な片思いってことだよね。それをどうにかしようとしてたってこと?

水城くんに協力して貰ってまで。

「なんか、切ないね」

そんなこと思うと、しゅんとしてしまう。
< 328 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop