みんな、ときどきひとり
「そうですね。頑張るから協力してとか言ってきますけど。人の気持ちは変えれませんからね」
気持ちは変えれない、か。
そうだね。
隣にいる君を見て思ったよ。同じ言葉を。
じゃあ、やっぱり、水城くんは誰も好きになることがないのかな。
これからも。
ううん。それは、やっぱりわからないことだけど。
「そっか」
花火を黙って見つめた。
その沈黙が、余計にそのことばかりを考えさせて、切なくなってしまう。
「今日は、なんかしてたの?」
会話を繋げようとした。なるべく明るい話に。暗い気持ちは置いておきたいから。
「今日は墓参り」
「墓参り?」
もうお盆の時期は過ぎたというのに墓参りなんて遅くないかな。
「母親の」と、彼が言ったあと、花火が消えた。
「ああ。そっか」
間の抜けた返事をした。しけた花火みたいに。
わたしの手持ち花火も消えて、また暗闇が訪れた。
「火、消えましたね」と彼は言ってライターの火をつける。
「打ち上げやりますか」と、足元に置いてある打ち上げ花火を手にする。
うっすら10連発の文字が見えた。
「もしかして、命日とか?」
打ち上げ花火の導火線に火がついて、「わっ」と声をあげて2人で後ろに下がった。
期待を裏切るかのように、ポーンポーンポーンと気の抜けた音を立て、赤や黄色と色を変えて、花火がゆっくり10発上がった。
「しょぼ……」
思わず、声が合ってしまって笑う。