みんな、ときどきひとり
「こっちの打ち上げ、どうだろう」
四角い打ち上げ花火を手にして、彼の手からライターを受け取った。
受け取った瞬間に触れた手のぬくもりを感じた。
「この花火の何倍、今日の花火はでかかったんですかね」
目の前にある、今にも力つきそうな小さな流れる打ち上げ花火を見つめながら水城くんは呟いた。
「確かに」
だけどわたしは、今まで見た花火の中で一番綺麗だなと思った。
最後に残った線香花火を手にして、2人でしゃがんだ。
地面から伸びる、雑草が足をチクチク刺す。
「じゃあ、勝負」
パチパチと燃える小さな小さな火の玉を2人で見つめた。
「命日です」
少し遅れたその言葉は、さっきのわたしの質問に対しての答えだった。
「うん」
先輩、と言った。
「観覧車のてっぺんで昔なにを願ったかって、先輩が訊いたこと憶えてますか?」
「うん。忘れちゃったって言ってたね」
「俺、小学校のときに願ったこと、本当はずっと憶えてました」
わたしの線香花火も彼の線香花火もだんだんと火の玉を大きくして上へ上へと昇ってくる。
「なんてお願いしたの?」