みんな、ときどきひとり

もう一度、強く言う。

だって、わたしは水城くんから貰ったんだよ。

「水城くんは、変じゃないんだよ」

花火の音だけが聞こえる。

「わたし、水城くんは優しくしてないって言ってたけど。
言葉でいつも力貰ってたよ。
そんなこと出来る人が優しくないわけないんだよ。
それにね、水城くんだからだよ。
他の人じゃそう思えなかったよ、きっと。
嬉しかったよ。すごくすごく嬉しかったよ。
人のこと苦手でも好きな人なんか出来なくても、それでいいよ。
そのままでいてよ」

わたしと水城くんの線香花火の火が同時に落ちて真っ暗になった。

「花火、終わっちゃいましたね」と水城くんは呟いた。

その声は、少し震えているように聞こえた。

「うん」

「あっという間でしたね」

水城くんの言うあっという間の意味を、花火が終わったことなのか、彼のお母さんが亡くなってからのことを言っているのかわからなかった。

彼は、今、なにをしてほしいんだろう。

彼は、今、なにを言ってほしいんだろう。

なんで、わかれないんだろう、彼の気持ちを。

わかることができないんだろう。

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