みんな、ときどきひとり
「すみません。なんか思い出しただけなんで。帰りますか」と言って、水城くんは携帯のライトをつけて辺りを照らす。
泣いてるのがばれないように、しゃがんだまま顔を暗闇のほうへ向けた。
「うん」
「また、泣いてません?」
やっぱり好きだ。心はどうしようもないくらい、彼を思う。
「どうしたんですか?」
わたしの隣にしゃがんで、顔を覗き込んできた。
涙を指の腹で拭って、隣にいる彼に身体を向ける。
「水城くんのこと、考えてたら涙がでてきちゃったよ」
「俺のこと、考えてたら?」
「うん。でも違う。わたしが泣きたかっただけだ」
そのまま両手で水城くんを、抱きしめた。
彼の顔がわたしの肩の上に優しく乗る。
「なに、してるんですか?」
「抱きしめてるの。抱きしめてるの。小さい頃の水城くんと、今の水城くんを」
「また意味のわからないことを」
小さく呆れたような声。
「わたしは……わたしは、どっちの水城くんも大好きだよ。
水城くんが、自分のこと変だって言ったって。
わたしは、必要なんだよ。
居てほしいんだよ。
大切なんだよ。
こんなに誰かになにかしたいって思ったことがないくらい。
だけど、なにも出来ないから、抱きしめてるの。
ごめんね」
水城くんが、わたしに力をくれたように、わたしもなにかを。
知らないうちに彼に何かを与えてあげれればいいのに。
なにも、出来なくて、ごめんね。
君をただ、好きということしかわたしにはないみたいだ。
だけど、それは。
君には、必要のないこと。