みんな、ときどきひとり
「先輩、肩冷たい」
「へ?」と、彼の肩を触ると、冷たい。
わたしのいっぱいの涙で、湿っていた。
「ごめん」
ぱっと両手を離した。
「俺、誰かに、肩でこんなに泣かれるの初めてですよ」と言った声は、少し笑っていた。
「ごめん」
感情的になってしまって、恥ずかしくなる。だけど、抱きしめずにはいられなかった。
会えるはずもない、過去の傷ついた君と。
それを抱えたまま生きている今の君を。
傷も過去もなにも知らないのに、わたしの自己満足だ。
最低だなと、下を向く。
「そんなこと、誰にも言われたことないですよ」と、彼がまた笑って、呟いた。
笑ってくれただけでも、彼になにか出来たのだろうか。